初学者向け共同開発チュートリアル
シンプルなWindows Formsアプリケーションを共同開発し、フォームにボタンをクリックするとメッセージを表示する機能を実装します。
初期からのバージョン管理手順
1. プロジェクトの準備
1.1 Visual Studioでソリューションの作成
- 開発者A: Visual Studioを開き、「新しいプロジェクトの作成」→「Windows Forms アプリ (.NET Framework)」を選択します。プロジェクト名を「SimpleFormApp」に設定し、「作成」をクリックします。
1.2 プロジェクトのセットアップ
- 開発者A: ソリューションエクスプローラーで「SimpleFormApp」フォルダを右クリックし、「フォルダーをエクスプローラーで開く」を選択します。プロジェクトフォルダを確認し、そのフォルダを保持しておきます。フォルダのパスは「MyCsharpProjectsフォルダのすぐ下のフォルダ」であることを確認します。
1.3 共有するリポジトリの作成
- 開発者A: GitHub Desktopを開きます。エクスプローラーで「SimpleFormApp」フォルダをドラッグし、GitHub Desktopのウィンドウにドロップします。ここで、「.gitignore」のテンプレート選択画面で「VisualStudio」を選択します。「Create repository」をクリックして、リポジトリにプロジェクトが追加されます。「Publish origin」をクリックして、リポジトリに変更をプッシュします。
1.4 コラボレーターの追加
- 開発者A: GitHubリポジトリのページを開きます。「Settings」タブをクリックし、左側のメニューから「Collaborators」を選択します。「Add people」をクリックし、開発者Bと開発者CのGitHubユーザー名を入力して招待します。
- 開発者B, 開発者C: 招待メールが届いたら、「View invitation」をクリックして招待を受けます。
1.5 リポジトリのクローン
- 開発者Bおよび開発者C: GitHubリポジトリのページにアクセスします。右上の「Code」緑ボタンをクリックし、「Open with GitHub Desktop」を選択してローカルにクローンします。
2. 開発作業の分担
2.1 タスクの割り当て
- 開発者A: メインフォームのUIデザイン
- 開発者B: ボタンのクリックイベント
- 開発者C: メッセージ表示機能
2.2 ブランチの作成
- 開発者A: GitHub Desktopで「Branch」→「New branch」を選択し、ブランチ名を「feature/UI-design」として「Create branch」をクリックし、ブランチを切り替えます。
2.3 作業の開始
開発者A(UIデザイン)
- Visual Studioでフォームに「Button」と「TextBox」を配置します。
- ボタンのプロパティを以下のように設定します:
- Name: button1
- Text: Click Me
- TextBoxのプロパティを以下のように設定します:
- Name: textBox1
- ボタンのプロパティを以下のように設定します:
- 開発者A: GitHub Desktopで変更をコミットし、「Commit to feature/UI-design」をクリックします。続いて、「Publish origin」をクリックしてブランチに変更をプッシュします。
2.4 プルリクエストの作成とマージ
- 開発者A: Changesタブを選択し、「Preview Pull Request」ボタンをクリックして、事前確認後、「Create a pull request」をクリックします。また、GitHub Desktopで「Current Repository」から「Create a pull request」のリンクをクリックすることもできます。ブラウザが開きますので、タイトルと説明を入力し、「Create pull request」をクリックします。
- 開発者Bおよび開発者C: プルリクエストをレビューし、必要に応じてコメントを追加します。全員がレビューを完了したら、プルリクエストをマージします。「Merge pull request」をクリックし、ページが切り替わったら「Confirm merge」をクリックします。
- 開発者Bおよび開発者C: GitHub Desktopで「main」ブランチに切り替え、「Fetch origin」をクリックして最新の変更を取得します。
2.5 ブランチの作成(開発者B)
- 開発者B: GitHub Desktopで「Branch」→「New branch」を選択し、ブランチ名を「feature/button-click-event」として「Create branch」をクリックし、ブランチを切り替えます。
開発者B(クリックイベント)
- Visual StudioでForm1.csを開き、button1のクリックイベントハンドラーを追加します。
namespace SimpleFormApp
{
public partial class Form1 : Form
{
public Form1()
{
InitializeComponent();
// ボタンのクリックイベントを設定
this.button1.Click += button1_Click;
}
// クリックイベントハンドラの定義
private void button1_Click(object sender, EventArgs e)
{
// クリックイベントのロジックを追加
}
}
}
- 開発者B: GitHub Desktopで変更をコミットし、「Commit to feature/button-click-event」をクリックします。続いて、「Publish origin」をクリックしてブランチに変更をプッシュします。
2.6 プルリクエストの作成とマージ
- 開発者B: Changesタブを選択し、「Preview Pull Request」ボタンをクリックして、事前確認後、「Create a pull request」をクリックします。また、GitHub Desktopで「Current Repository」から「Create a pull request」のリンクをクリックすることもできます。ブラウザが開きますので、タイトルと説明を入力し、「Create pull request」を再度クリックします。
- 開発者Aおよび開発者C: プルリクエストをレビューし、必要に応じてコメントを追加します。全員がレビューを完了したら、プルリクエストをマージします。「Merge pull request」をクリックし、ページが切り替わったら「Confirm merge」をクリックします。
- 開発者Aおよび開発者C: GitHub Desktopで「main」ブランチに切り替え、「Fetch origin」をクリックして最新の変更を取得します。
2.7 ブランチの作成(開発者C)
- 開発者C: GitHub Desktopで「Branch」→「New branch」を選択し、ブランチ名を「feature/message-display」として「Create branch」をクリックし、ブランチを切り替えます。
開発者C(メッセージ表示)
- Visual StudioでForm1.csのbutton1_Clickメソッドにメッセージ表示のロジックを追加します。
namespace SimpleFormApp
{
public partial class Form1 : Form
{
public Form1()
{
InitializeComponent();
// ボタンのクリックイベントを設定
this.button1.Click += button1_Click;
}
// クリックイベントハンドラの定義
private void button1_Click(object sender, EventArgs e)
{
// メッセージ表示のロジックを追加
textBox1.Text = "Hello, World!";
}
}
}
- 開発者C: GitHub Desktopで変更をコミットし、「Commit to feature/message-display」をクリックします。続いて、「Publish origin」をクリックしてブランチに変更をプッシュします。
2.8 プルリクエストの作成とマージ
- 開発者C: Changesタブを選択し、「Preview Pull Request」ボタンをクリックして、事前確認後、「Create a pull request」をクリックします。また、GitHub Desktopで「Current Repository」から「Create a pull request」のリンクをクリックすることもできます。ブラウザが開きますので、タイトルと説明を入力し、「Create pull request」をクリックします。
- 開発者Aおよび開発者B: プルリクエストをレビューし、必要に応じてコメントを追加します。全員がレビューを完了したら、プルリクエストをマージします。「Merge pull request」をクリックし、ページが切り替わったら「Confirm merge」をクリックします。
- 開発者Aおよび開発者B: GitHub Desktopで「main」ブランチに切り替え、「Fetch origin」をクリックして最新の変更を取得します。
3. 最終調整とデプロイ
3.1 最終テスト
- Visual Studioでプロジェクトをビルドし、アプリケーションが正しく動作することを確認します。
3.2 デプロイ
- 完成したアプリケーションを必要に応じてデプロイします(例:exeファイルとして配布)。
課題
上記「初期からのバージョン管理手順」を参考にして次の課題に取り組みましょう
入力された情報を元にあいさつを表示
シンプルなWindows Formsアプリケーションを共同開発し、ユーザー入力と挨拶の表示機能を実装します。
ブランチ名:
- 開発者A:
feature/design
- 開発者B:
feature/input
- 開発者C:
feature/greeting
Visual Studioでソリューションの作成
開発者A
「GreetingFormApp」ソリューションを作成します
フォームのデザイン:
開発者A
ツールボックスから以下のコントロールをフォームに追加します:
Label
(プロパティ: Text="名前を入力してください:")TextBox
(プロパティ: Name="nameTextBox")Button
(プロパティ: Text="挨拶", Name="greetButton")Label
(プロパティ: Name="greetingLabel")
イベントハンドラの追加:
開発者B
フォームデザインビューでgreetButton
をダブルクリックし、Click
イベントのハンドラを生成します。生成されたメソッドに以下のコメントを追加します。
private void greetButton_Click(object sender, EventArgs e)
{
// クリックイベントのロジックを追加
}
開発者C
イベントハンドラのブロックに実行コードを追記します
private void greetButton_Click(object sender, EventArgs e)
{
string name = nameTextBox.Text;
greetingLabel.Text = $"こんにちは、{name}さん!";
}
To-Doリストアプリ
シンプルなTo-Doリストアプリを共同開発し、タスクを追加、表示、削除する機能を実装します
タスク(仕事)の割り当て
- 開発者A: メインフォームのUIデザイン
- 開発者B: タスクの追加機能
- 開発者C: タスクの削除機能
ブランチ名:
- 開発者A:
feature/design
- 開発者B:
feature/add-task
- 開発者C:
feature/delete-task
Visual Studioでソリューションの作成
開発者A
「TodoListApp」ソリューションを作成します
フォームのデザイン:
開発者A
Visual Studioでフォームに「TextBox」と「Button」と「ListBox」を配置します。各コントロールのプロパティを以下のように設定します:
- TextBox
- Name:
taskTextBox
- Name:
- Button
- Name:
addButton
- Text:
タスク追加
- Name:
- ListBox
- Name:
taskListBox
- Name:
イベントハンドラの追加:
開発者B
addButton
のクリックイベントハンドラーを次を参考に追加します。
// Form1.cs
using System.Windows.Forms;
using System;
namespace TodoListApp
{
public partial class Form1 : Form
{
public Form1()
{
InitializeComponent();
// ボタンのクリックイベントを設定
addButton.Click += addButton_Click;
}
// クリックイベントハンドラの定義
// addButton がクリックされたときに呼び出されるメソッド
private void addButton_Click(object sender, EventArgs e)
{
// taskTextBox からユーザーが入力したタスクを取得
string task = taskTextBox.Text;
// タスクが空でないかをチェック
if (!string.IsNullOrEmpty(task))
{
// タスクを taskListBox に追加
taskListBox.Items.Add(task);
// taskTextBox をクリア
taskTextBox.Clear();
}
}
}
}
開発者C
taskListBox
のクリックイベントハンドラーを次を参考に追加します。
// Form1.cs
using System.Windows.Forms;
using System;
namespace TodoListApp
{
public partial class Form1 : Form
{
public Form1()
{
InitializeComponent();
// ボタンのクリックイベントを設定
addButton.Click += addButton_Click;
// ListBoxのダブルクリックイベントを設定
taskListBox.DoubleClick += taskListBox_DoubleClick;
}
private void addButton_Click(object sender, EventArgs e)
{
string task = taskTextBox.Text;
if (!string.IsNullOrEmpty(task))
{
taskListBox.Items.Add(task);
taskTextBox.Clear();
}
}
// ListBoxのダブルクリックイベントハンドラ
private void taskListBox_DoubleClick(object sender, EventArgs e)
{
// 選択されている項目があるかをチェック
if (taskListBox.SelectedItem != null)
{
// 選択されている項目をリストボックスから削除
taskListBox.Items.Remove(taskListBox.SelectedItem);
}
}
}
}
開発者Aがリポジトリを作成し、開発者Bと開発者Cが変更を加える(コンフリクト解決の手順)
1つのボタンを配置し、クリックするとメッセージを表示するシンプルなアプリケーションを開発します。開発者Aが最初にリポジトリを作成し、開発者Bと開発者Cがそれぞれ異なる変更を加えます。その過程で発生するコンフリクトを解決する方法も説明します。
タスク(仕事)の割り当て
- 開発者A: メインフォームのUIデザイン
- 開発者B: ボタンの色を変更
- 開発者C: ボタンのテキストを変更
ブランチ名:
- 開発者A:
feature/design
- 開発者B:
feature/button-color
- 開発者C:
feature/button-text
Visual Studioでソリューションの作成
開発者A
「SimpleButtonApp」ソリューションを作成します
フォームのデザイン:
開発者A
Visual Studioでフォームに「Button」を配置します。コントロールのプロパティを以下のように設定します:
- Button
- Name:
simpleButton
- Text:
Click Me!
- Name:
イベントハンドラの追加:
開発者A
ボタンのClickイベントハンドラを生成し、以下のコードを追加します:
private void simpleButton_Click(object sender, EventArgs e)
{
MessageBox.Show("Button Clicked!");
}
開発者Bと開発者Cが同じForm1.csファイルの変更作業をローカルで行います
開発者Aがプルリクエストしmainブランチへマージされた後、mainブランチから開発者Bと開発者Cが各自ブランチを作成したところから始めます
開発者B
以下のコードをsimpleButton_Click
メソッド内に追加して、ボタンの背景色を変更します:
simpleButton.BackColor = Color.LightBlue;
変更をGitHub Desktopでコミットし、feature/button-color
ブランチにプッシュします。
開発者C
以下のコードをsimpleButton_Click
メソッド内に追加して、ボタンのテキストを変更します:
simpleButton.Text = "Press Me!";
変更をGitHub Desktopでコミットし、feature/button-text
ブランチにプッシュします。
開発者B
プルリクエストを発行し、開発者A, 開発者Cにマージしてもらいます
コンフリクトの発生
開発者C
続けて、開発者Cがプルリクエストするために、Github Desktopでpull requestのPreviewを実行します
右下に自動マージができないエラーが表示されます
強引にpull requestを進めると・・・
開発者Cが、GitHubで修正作業するパターン
GitHub(クラウド)側のプルリクエスツの画面で、この競合を解決するようにアナウンスされます
上記画面で、Resolve conflictsボタンをクリックして、修正することができます
この画面はテキストエディターとして機能しています
開発者Cが、GitHub desktopで修正作業するパターン
メニューからUpdate from mainを選択
これは、mainの変更内容を自分のブランチに取り込む作業になります
ここで、VisualStudio Codeを使った修正ができるようになります
Open in Visual Studio Codeをクリックして修正していきます
修正が完了すると、再度、コミットしてプッシュし、続けます
<<<<<<< HEAD
simpleButton.BackColor = Color.LightBlue;
=======
simpleButton.Text = "Press Me!";
>>>>>>> feature/button-text
コンフリクトの解決:
- 両方の変更を適用したい場合、「Accept Both Changes」を選択し、以下のように統合します:
simpleButton.BackColor = Color.LightBlue;
simpleButton.Text = "Press Me!";
解決済みのファイルの保存:
- コンフリクトを解決したら、VS Codeでファイルを保存します。
GitHub Desktopでの確認とコミット:
- GitHub Desktopに戻り、解決済みのファイルを確認します。
- 「Summary」に解決内容を記述して「Commit Merge」をクリックします。
リモートリポジトリへのプッシュ:
- 解決済みの変更をリモートリポジトリにプッシュします。
まとめ
このチュートリアルでは、開発者Aが最初にリポジトリを作成し、開発者Bと開発者Cがそれぞれ異なる変更を加えた結果、コンフリクトが発生し、それを解決する方法を学びました。GitHub DesktopとVisual Studio Codeを使用したコンフリクト解決の手順を理解することで、チーム開発の中で発生する問題に迅速に対応できるようになります。
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