C# 従来構文 vs. パターン構文 ― 使い分けガイド

2025年7月13日

1. 1. そもそも「従来構文」「パターン構文」とは？
2. 2. 代表的な書き方の比較
3. 3. コード例で見る「差」
4. 4. いつパターン構文を採用すべきか？
5. 5. 移行時の注意点
6. 6. まとめ

1. そもそも「従来構文」「パターン構文」とは？

用語	概要	主なキーワード
従来構文	if / else if / switch に論理演算子 (&&, `
パターン構文	パターンマッチングを用いて「値の形」を検査し、追加の束縛（変数への代入）やガード（when 句）を行う新しい書き方。	is, switch, switch expression, relational / logical / list patterns

2. 代表的な書き方の比較

観点	従来構文	パターン構文
読みやすさ	条件が複雑になるほどカッコと演算子が増えがち	“〇〇なら許可／それ以外禁止” の形で宣言的に書ける
重複コード	複数の if で同じ対象を何度も書きやすい	1 回値を書いて複数条件を連鎖しやすい (switch式)
型チェック	obj is int ⇒ 直後にキャスト	obj is int v and >= 0 の 1 行で完結
範囲チェック	x >= 0 && x <= 9	x is >= 0 and <= 9
null 許容参照	if (s != null && s.Length > 0)	if (s is { Length: > 0 })
配列／コレクション	ループや Length → if	arr is [1, .., >0] (C# 12 list pattern)
C# バージョン	すべてのバージョン	機能ごとに C# 7～12 が必要
パフォーマンス	同等 (コンパイル後 IL は類似)	同等。可読性向上が主目的

3. コード例で見る「差」

3-1 整数の範囲チェック

従来構文

if (0 <= x && x <= 9) 
{
    Console.WriteLine("0〜9");
}

パターン構文 (relational + logical pattern, C# 9)

if (x is >= 0 and <= 9) 
{
    Console.WriteLine("0〜9");
}

3-2 型判定＋追加条件

従来構文

if (obj is int) 
{
    var v = (int)obj;
    if (v >= 0) Console.WriteLine(v);
}

パターン構文 (type pattern + relational pattern)

if (obj is int v and >= 0) 
{
    Console.WriteLine(v);
}

3-3 switch での宣言的分岐

従来構文

switch (c) 
{
    case 'a':
    case 'e':
    case 'i':
    case 'o':
    case 'u':
        kind = "Vowel";
        break;
    default:
        kind = "Consonant";
        break;
}

パターン構文 (switch expression, C# 8)

string kind = c switch 
{
    'a' or 'e' or 'i' or 'o' or 'u' => "Vowel",
    _                               => "Consonant"
};

4. いつパターン構文を採用すべきか？

ケース	推奨構文	理由
① 1 つの値に複数条件を当てはめる	パターンswitch expression	同一値を 1 度しか書かず保守性が高い
② 型分岐＋追加条件がある	パターン	キャストを省略でき、null 安全も強化
③ コレクションの形を検査	パターン (list pattern)	Length･添字比較より宣言的
④ 簡単な単条件	従来構文	シンプルさ優先、学習コスト不要
⑤ 高性能が最優先ポイント	どちらでも可	IL 生成はほぼ同等、可読性で選ぶ

5. 移行時の注意点

導入バージョンを確認
- プロジェクトが C# 9 未満ならリレーショナルパターンは使用不可。
- Unity（現行 LTS）は C# 10 相当で list pattern がまだ使えない、など。
優先順位を明示and が or より高い。複雑な条件は括弧で意図を示す。

// 意図がブレない例
if (x is (>= 0 and <= 9) or 99) { … }

switch 落とし穴
- switch 文では上から順番に判定、switch expression では網羅性チェックが走る。
- default: と _ は最後に置いて、意図せぬマッチを防ぐ。
パフォーマンス計測条件が 1 万回/フレーム以上呼ばれる箇所では、念のため BenchmarkDotNet などで IL & JIT を実測してから採用判断を。