C# 非同期メソッド実装と呼び出しガイド
本資料では、C# における非同期メソッドの実装方法と、その呼び出し方法について、以下の点をまとめています。
- async Task と async void の違い
- 非同期メソッドの呼び出し方法(非同期呼び出しと同期呼び出し)
- 呼び出し元での await の必要性
目次
1. 非同期メソッドの基本
C# では、async
/await
パターンにより非同期処理を簡単に実装できます。
主なポイントは以下の通りです:
- メソッド定義:
非同期メソッドはasync
修飾子を付け、戻り値にTask
(または戻り値がある場合はTask<T>
)を使用します。 - 遅延処理:
Task.Delay
を利用することで、指定したミリ秒数の非同期待機が実現できます。 - 例外処理:
async Task
の場合、呼び出し元でawait
すると、非同期処理内で発生した例外をキャッチすることが可能です。
サンプルコード
using System;
using System.Threading.Tasks;
class Program
{
// 非同期メソッド(Task を返す)
static async Task ProcessWithDelayAsync()
{
for (int i = 0; i < 5; i++)
{
Console.WriteLine($"Iteration {i}: 処理を実行中...");
await Task.Delay(1000); // 1秒待機
}
Console.WriteLine("非同期処理完了");
}
}
2. async Task と async void の違い
async Task
- 戻り値:
戻り値としてTask
を返すため、呼び出し元でawait
を利用して完了待ちや例外処理が可能です。 - 推奨ケース:
非同期処理の結果を管理したい場合や、例外処理を行う必要がある場合に使用します。
async void
- 戻り値:
戻り値がなく、呼び出し元で待機することができません。 - 使用例:
イベントハンドラーなど、戻り値を期待できない特殊なケースに限定して使用します。 - 問題点:
例外が呼び出し元に伝播されず、デバッグやエラーハンドリングが困難になります。
3. 呼び出し方法
3.1 非同期メソッドとして呼び出す(async Taskの場合)
呼び出し側も非同期メソッドとして定義し、await
を利用する方法が一般的です。
この方法では、非同期処理の完了を待機でき、例外も適切にキャッチ可能です。
using System;
using System.Threading.Tasks;
class Program
{
static async Task ProcessWithDelayAsync()
{
for (int i = 0; i < 5; i++)
{
Console.WriteLine($"Iteration {i}: 処理を実行中...");
await Task.Delay(1000);
}
Console.WriteLine("非同期処理完了");
}
// 非同期呼び出し側メソッド
static async Task CallerMethodAsync()
{
Console.WriteLine("CallerMethodAsync 開始");
try
{
await ProcessWithDelayAsync();
Console.WriteLine("CallerMethodAsync 完了");
}
catch (Exception ex)
{
Console.WriteLine($"例外が発生: {ex.Message}");
}
}
// エントリーポイント(C# 7.1以降なら Main も async に可能)
static async Task Main(string[] args)
{
await CallerMethodAsync();
}
}
3.2 同期的に呼び出す方法
場合によっては、非同期メソッドを同期的に呼び出す必要があることもあります。
その際は、戻り値の Task
に対して .Wait()
や .GetAwaiter().GetResult()
を用いて待機します。
using System;
using System.Threading.Tasks;
class Program
{
static async Task ProcessWithDelayAsync()
{
for (int i = 0; i < 5; i++)
{
Console.WriteLine($"Iteration {i}: 処理を実行中...");
await Task.Delay(1000);
}
Console.WriteLine("非同期処理完了");
}
// 同期呼び出し側メソッド
static void CallerMethod()
{
// 同期的に完了を待機(ただし、UIスレッド等ではデッドロックに注意)
ProcessWithDelayAsync().Wait();
// または、以下も同等
// ProcessWithDelayAsync().GetAwaiter().GetResult();
Console.WriteLine("CallerMethod 完了");
}
static void Main(string[] args)
{
CallerMethod();
}
}
注意:
同期的な呼び出しは、UIスレッドや特定のコンテキストでデッドロックを引き起こす可能性があるため、可能な限り非同期パターン (await
を使用) を推奨します。
3.3 async void の場合の呼び出し
async void
の場合、呼び出し元で待機や例外処理ができないため、単に呼び出すだけとなります。
通常はイベントハンドラーなどで利用されます。
using System;
using System.Threading.Tasks;
class Program
{
// async void の非同期メソッド
static async void ProcessWithDelayVoid()
{
for (int i = 0; i < 5; i++)
{
Console.WriteLine($"Iteration {i}: 処理を実行中...");
await Task.Delay(1000);
}
Console.WriteLine("非同期処理完了");
}
// 呼び出し側のコード(await できないため、単に呼び出すだけ)
static void CallerMethodVoid()
{
ProcessWithDelayVoid();
Console.WriteLine("CallerMethodVoid 呼び出し完了");
}
static void Main(string[] args)
{
CallerMethodVoid();
}
}
4. 呼び出し元での await の必要性について
- async Task の場合:
呼び出し元でawait
することで、非同期処理の完了を正しく待機でき、例外処理も可能となります。
ただし、呼び出し元でawait
を使用しなくてもコードはコンパイルされますが、その場合は処理が非同期で進むため、意図しない動作や例外の伝播漏れが発生する可能性があります。 - まとめ:
- 推奨: 非同期メソッドを呼び出す際は、
await
を使ってその完了を待機し、例外処理も含めた安全な実装を行う。 - 例外: 並列実行や結果を後でまとめて管理する場合、返された
Task
を利用して適切なタイミングで待機する方法もあり、その場合は明示的なawait
が不要なケースもあります。
- 推奨: 非同期メソッドを呼び出す際は、
5. まとめ
- async Task と async void の使い分け:
- 非同期メソッドで結果の待機や例外処理が必要な場合は
async Task
を使用。 - イベントハンドラーなど、戻り値が不要なケースに限定して
async void
を使用。
- 非同期メソッドで結果の待機や例外処理が必要な場合は
- 呼び出し方法の違い:
async Task
の場合は、呼び出し元でawait
するのが望ましい。- 同期呼び出しが必要な場合は、
.Wait()
や.GetAwaiter().GetResult()
を利用するが、注意が必要。 - await の必要性:
async Task
を返すメソッドは必ずしも呼び出し元でawait
しなくても動作しますが、非同期処理の完了待機や例外処理の観点から、ほとんどの場合await
を使うことが推奨されます。
以上が、C# における非同期メソッドの実装および呼び出し方法の詳細なガイドです。これらの知識を活用して、適切な非同期プログラミングを行ってください。
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