オブジェクト指向の「つかみにくさ」を伝える 4 つのたとえ話
オブジェクト指向の用語を丸暗記しても、「結局どう便利なの?」という実感が湧きにくい──そんな初学者の“モヤモヤ”をほぐすのが本記事の狙いです。色・自転車・4 次元・だし ―― 4 つの身近なたとえで抽象概念をかみ砕き、コードを書く前に“理解の土台”を作れるように構成しました。
オブジェクト指向は、難しいと言うより伝えづらい用語
# | たとえ | どこが似ているか | 補足 |
---|---|---|---|
1 | 「色」を知らない人に“紫”を説明する | – 紫とは赤と青の混ざり合いだと伝えても、赤と青自体を知らなければイメージできない。- オブジェクト指向も「クラス」「継承」「ポリモーフィズム」などの“基礎色”が見えていないと全体像が掴めない。 | 実際に光を見せるしかないように、OOP もコードを書いて挙動を“体験”させるのが早道。 |
2 | “自転車の乗り方”を文章だけで教える | – バランス感覚は言語化が難しく「ペダルを漕ぎながらハンドルを微調整して…」と説明してもピンと来ない。- OOP も「実装と実行」を経験しないと “クラス同士が協調して動く感覚” を掴みにくい。 | 最初は補助輪(=デザインパターンのサンプル)を付けて走らせると理解が深まる。 |
3 | 4 次元立方体(テッセラクト)を 3D CG なしで想像してもらう | – 3 次元しか感覚のない人に「立方体がもう一方向に伸びた形」と言っても想像が追いつかない。- OOP も「データと振る舞いが一体」という 1 段上の抽象化層を頭の中で回せるようになるまで時間がかかる。 | 2→3 次元の拡張を思い出させてから段階的に 4 次元を導入するのがコツ。OOP も構造化⇒抽象化⇒再利用とステップを分ける。 |
4 | 和食の“だし”の味を海外の人に説明する | – 昆布や鰹節を知らないと「旨味の重なり」と言われても実感できない。- OOP も「状態(データ)と振る舞い(メソッド)を同じ鍋で煮込むことで出る“旨味”」を経験しないと腑に落ちない。 | 実際にだしをひと口飲んでもらう ⇒ 小さなクラスを動かして“旨味”を体験してもらう。 |
オブジェクト指向が“ふわっとしか分からない”ときに読む 4 つのたとえ話
1. 「紫ってどんな色?」問題
- 状況赤と青を見たことがない人に「紫は赤と青が混ざった色だよ」と言ってもピンと来ません。
- オブジェクト指向との関係赤=プロパティ、青=メソッド……といった“材料”を知らないと、紫=オブジェクト指向の姿が想像できません。
- 学び方のヒントまずは「変数だけのプログラム → メソッド付きのプログラム → クラスでまとめるプログラム」と、材料を一つずつ体験してみましょう。
2. 「自転車の乗り方を本だけで覚える」問題
- 状況「ペダルをこぎながらハンドルをちょっとずつ調整して…」と説明文を読んでも、実際に乗らないと倒れてしまいます。
- オブジェクト指向との関係クラス同士が助け合って動く“バランス感覚”は、本を読むだけでは掴めません。
- 学び方のヒントサンプルプロジェクト(=補助輪付き)を最初に動かしてみて、「動くとこうなるのか!」を体で覚えましょう。
3. 「4 次元を想像してみて」問題
- 状況2 次元(平面)→3 次元(立体)までは分かっても、4 次元と言われると急にイメージが止まります。
- オブジェクト指向との関係いきなり「オブジェクト同士の会話」と聞くより、「変数 → 配列 → 構造体 → クラス」と一段ずつ抽象度を上げる方が理解しやすいです。
- 学び方のヒント書いたコードを「図」にして確認する(クラス図・シーケンス図など)と、次元を上げる感覚が掴めます。
4. 「昆布だしを飲んだことがないのに“旨味の重なり”を説明される」問題
- 状況昆布やかつお節の味を知らないと、「だしが効いていておいしいよ」と言われても実感できません。
- オブジェクト指向との関係データ(状態)とメソッド(振る舞い)を一緒の鍋で“煮込む”おいしさは、小さなクラスを実際に動かしてみないとわかりません。
- 学び方のヒント10 行程度の“ミニクラス”を作り、「お、これ便利!」と感じた瞬間が“だしを一口飲んだ”体験になります。
まとめ ―― 初心者はこう進めるとラク
- 材料を小分けで味わういきなり「クラスを書け」ではなく、「まずメソッド」「次に複数メソッドをまとめる」とステップを刻む。
- 必ず動かしてみる動かさないまま読んでいるのは“自転車の説明書”だけ読んでいる状態。小さくてもいいので必ず実行。
- 図やメモで“見える化”変数→メソッド→クラスの関係を手描きでもいいので図にして整理すると、頭の中が整理される。
覚えておきたいこと
オブジェクト指向が分かりにくいのは、あなたの能力ではなく“体験の順番”が合っていないだけ。
小さく動かし、段階を踏み、味わってみる――この 3 ステップでモヤモヤは必ず晴れていきます。
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