「ワタシハ リナックス チョットデキル」に学ぶ
登壇の“つかみ”とエンジニア文化のユーモア設計
目次
イントロ

Linux の生みの親・リーナス・トーバルズが日本のイベント(LinuxCon Japan 2014)で着ていたTシャツ――
「ワタシハ リナックス チョットデキル / I can develop Linux a little」。
会場の空気が一気に和む“控えめジョーク”として語り継がれ、国内のエンジニア文化にも定着しました。LinuxCon Japan 2014の現地レポートには、参加者特典Tシャツを気に入って着用していた旨の記述と写真が残っています。
本稿では、この“チョットデキル”がなぜ強力な導入になるのか、プレゼンや講義にどう応用できるかを、一次情報とともに整理します。
何が起きたのか:事実関係の整理
- 場所と文脈:LinuxCon Japan 2014(現・Open Source Summit の前身)。毎年、日本でも開催されるLinux Foundation系カンファレンスです。
- Tシャツの由来:2014年の参加者特典Tシャツの文言が「ワタシハリナックスチョットデキル」。リーナス本人がそれを着て登壇し話題に。
- 拡散と定着:以後、日本のエンジニア界隈で「チョットデキル=実は“めちゃできる”」という逆説的ミームとして浸透。解説記事やSNSでも取り上げられ続けています。
- 本人の語り口:リーナスは講演でも「自分はビジョナリーではなくエンジニア」と語る等、控えめかつ実務家の自己定義で知られます(TEDブログの引用)。
なぜウケるのか:3つの設計要素
- 自己卑下×事実の反転“ちょっとだけ”と言いながら、実際は世界規模の開発を主導してきた人物――ギャップが笑いと敬意を同時に生む。
- ローカライズの妙カタカナ日本語のゆるい音感が、海外ゲストの硬さを中和。会場共有の“内輪ノリ”を作る。
- 役割宣言としてのユーモア「ビジョナリーよりもエンジニア」という立ち位置表明が、以降の技術的議論をしやすくする。
現場で使える:登壇オープナーのテンプレ
目的:最初の30秒で“人”に注目させ、以降の内容理解を加速させる。
テンプレA:控えめ自己紹介(技術者向け)
- 「ワタシハ [技術名] チョットデキル——今日は“できるようになった理由”と“失敗談”から話します。」
- 続けて、実績の数字やコントリビュート履歴を1枚に集約し、笑い→根拠の順で安心感を作る。
テンプレB:教育現場向け(初学者を温める)
- 「私は[トピック] をチョットデキル。みなさんは今日から“チョットワカル”を持ち帰れます。」
- 直後に今日のゴールを短文で3点掲示(例:動くデモ、用語2つ、落とし穴1つ)。
テンプレC:パネル/対談型(司会がいるとき)
- 司会「自己紹介をひとことで」
- 登壇者「[領域] をチョットデキル。深掘りは質疑で。」
- 以降のQ&Aにハンドオフしやすく、対談進行(LinuxConの定番形式)とも相性が良い。
アンチパターン(やりがち注意)
- 内輪ミームの説明不足:意味を知らない層が置いてきぼりになる。1行補足を必ず添える。
- 過度な自己卑下:信頼の閾値を下げる危険。事実の裏付けスライドをすぐ出す。
- 文化・言語の配慮欠如:会場特性(学生/業界者/国際比率)に応じて文言を調整する。
すぐ使えるスライド草案(1–3枚)
- タイトル:「ワタシハ [技術名] チョットデキル」
- 小さく英訳 I can [do X] a little(※場に応じて)
- 自己紹介(根拠):実績3点(数・期間・代表作)
- 今日のゴール:到達点3点+NG例1点(落とし穴)
参考:一次・周辺情報
- LinuxCon Japan 2014 レポート(技評)— 当該Tシャツと登壇の記録。
- OSS Summit(旧LinuxCon)の概要ページ。
- OSS Japan 2023 の関連記事・動画(形式継承/対談スタイル)。
- TED公式ブログ:「I am not a visionary. I’m an engineer.」の本人発言。
- 「チョットデキル」ミームの解説記事(由来・意味の整理)。
まとめ
- 控えめユーモアは、専門性を落とさず会場を一体化させる強力な“導入装置”。
- ただのジョークではなく、立ち位置の宣言+根拠提示までをセットで設計するのがポイント。
- 次の登壇・講義で、「チョットデキル」→根拠→ゴールの3手を試してみてください。
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