「GameManager」Prefab化と再利用におけるデバッグフロー改善策技術資料
本資料では、GameManager
のようなシーンを跨ぐシングルトンオブジェクトをPrefab化し、最初のシーンで一度ロードして以降使い回す際に、開発中のデバッグフローにおいて起こりうる問題点と、その対処方法をまとめます。
シングルトンの構成をベースにしています
背景と問題点
GameManager
をシングルトンとして実装し、DontDestroyOnLoad
を用いて最初のシーンからゲーム全体を通して保持する場合、基本的なゲームフロー(最初のシーンから起動 → シーン遷移 → ゲーム進行)は正常に動作します。しかし、ゲーム開発中にはしばしば、中盤以降のシーンを直接Unityエディタで再生してデバッグしたいケースが発生します。
この場合、GameManager
インスタンスは最初のシーンでのみ生成されるため、中盤のシーンから再生したときにはインスタンスが存在せず、GameManager.Instance
を参照するとnull
参照エラーが起こり得ます。
対処方法と設計パターン
以下は、GameManager
が最初のシーンでのみ生成される前提を崩さずに、デバッグを容易にする方法です。
1. フォールバック生成処理
GameManager.Instance
アクセサで_instance
がnull
の場合、Prefabから自動でインスタンスを生成するような処理を組み込みます。
- 例:
Resources
フォルダやAddressables
を利用し、_instance == null
のときにInstantiate(prefab)
する。 - メリット: シーンがどこから始まっても
GameManager
が自動生成されるため、デバッグが簡易。 - 注意点: 本来想定していない遅延生成が発生するため、ゲームロジック上
GameManager
生成のタイミングがずれる可能性があります。
2. Bootシーン(初期化専用シーン)の追加ロード
実行時に必ずGameManager
を含む初期化シーン(Bootシーン)を読み込む運用にします。
- 方法:
- 中盤シーンでプレイボタンを押した場合でも、カスタムエディタツールやランタイムスクリプトでBootシーンを
LoadSceneAdditive
呼び出しなどで強制的にロードし、GameManager
を先に確保します。
- 中盤シーンでプレイボタンを押した場合でも、カスタムエディタツールやランタイムスクリプトでBootシーンを
- メリット: 必ず
GameManager
が存在する状態でゲームを開始できる。 - 注意点: 開発中のみの特殊対応が必要になるため、ビルド前には無効化するなどの管理が必要です。
3. デバッグ用プレースホルダー設置
デバッグ中のみ、中盤のシーンにGameManager
を一時的に手動配置してしまう方法です。
- 方法:
- デバッグしたいシーンに
GameManager
のPrefabを直接設置(本番運用では削除)
- デバッグしたいシーンに
- メリット: 手軽にデバッグ可能
- 注意点: 複数の
GameManager
が生成される可能性があり、シングルトン本来の運用を乱す。デバッグ後の片付け必須。
4. シーンロードフックによる自動補完
シーン読み込み時イベント(SceneManager.sceneLoaded
)などにフックして、GameManager
存在確認と生成を行う。
- 方法:
- シーン読み込みごとに、
GameManager
が存在しなければPrefab生成するコードを仕込む。
- シーン読み込みごとに、
- メリット: 確実に
GameManager
が存在する環境を整えられる - 注意点: 全シーンでイベントフックの処理が走るため、パフォーマンスや管理面を考慮する必要がある。
まとめ
GameManager
をPrefab化して最初のシーンのみで生成し、DontDestroyOnLoad
で使い続ける設計は、最終的なゲーム実行時にはシンプルかつ強力なアプローチです。しかし、開発時に中盤のシーンから直接デバッグしたいケースでは、インスタンスが存在しない問題が浮上します。
本資料で紹介した方法は、あくまで開発効率を上げるためのアプローチです。実際のプロジェクトでは以下のポイントを踏まえ、最適な手法を選択してください。
- フォールバック生成 → 臨機応変だがロジックが複雑になる可能性
- Bootシーンロード → 運用ルールを明確に定義できるが、開発中のワークフロー整備が必要
- 一時的な配置 → 手軽だが乱雑になりがち
- シーンロードフック → 汎用的だが、全シーンでのオーバーヘッド検討が必要
いずれにせよ、「GameManager
が存在しない場合どう動くか」という設計上の想定外ケースを考慮し、プロジェクトの規模やデバッグ頻度に応じた工夫を導入することで、円滑な開発・デバッグフローを確保できます。
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