条件式だけで十分?

― 初学者が「教科書を丸暗記」したくなる心理と、その乗り越え方 ―

プログラミングの授業で次のようなシンプルなコードを扱うことがあります。

int score = 0;   // ← 型名は int(小文字)が正しい
                 //    Int と書くとコンパイル エラーになります

if (score > 80)
{
    Console.WriteLine("優秀です");
}

この短いプログラムを正しく読めて・書けて・説明できるなら、少なくとも条件式の基本は理解できています。

それでも実際の教室では、こんな最小要素を押さえた段階でも 「教科書を頭から最後まで覚えないと不安」という声が後を絶ちません。


1. 初学者が「完全把握」にこだわる 5 つの理由

背景心理・状況
不安の裏返しどこが大事か判断できない → “漏れなく覚える” =安心
学習観の影響学校や資格試験で「覚えた量=点数」だった経験が強い
メタ認知不足自分の理解度を測る物差しがなく、ページ数で努力を可視化
記号ショック==, >, && など見慣れない記号を 形から暗記 しようとする
成功体験不足コードを動かす前に読書優先 → “動いた喜び”を味わわないまま戻る

2. 「理解できた」を可視化する 3 ステップ

2‑1. 読める・書ける・説明できる

ステージチェック例
読めるscore > 80 を自然な日本語に言い換えられるか
書ける変数名やしきい値を変えて自分で if 文を書けるか
説明できる“なぜ 80 は false で 81 は true か” を言葉で説明できるか

2‑2. ミニ改造課題

  • else を追加し、80 点未満で別メッセージを表示
  • && / || を使って複合条件へ発展

以下は、記事の 「2-2. ミニ改造課題」 で挙げられている

  • else を追加して 80 点未満時に別メッセージを表示する
  • 論理演算子 && / || を使って複合条件に発展させる

──この2点だけを反映した 最小構成のサンプル解答 です。 

using System;

class Program
{
    static void Main()
    {
        // 例:得点と出席率を入力値として用意
        int  score = 78;   // 得点(0〜100 点)
        int  attendance = 85;   // 出席率(0〜100 %)
        bool hasReport = true; // レポート提出済みか

        // ─ ① 「80 点未満の場合に別メッセージ」を表示 ─
        if (score > 80)
        {
            Console.WriteLine("優秀です");
        }
        else
        {
            Console.WriteLine("がんばりましょう");
        }

        // ─ ② 「&& / || で複合条件」を追加 ─
        //    ・得点が 80 点以上 かつ 出席率が 80 %以上 なら「合格」
        //    ・あるいは得点が 80 点以上 かつ レポート提出済みなら「条件付き合格」
        //    ・それ以外は「不合格」
        if (score >= 80 && attendance >= 80)
        {
            Console.WriteLine("【合格】得点も出席率もクリア");
        }
        else if (score >= 80 && hasReport)
        {
            Console.WriteLine("【条件付き合格】得点 OK — 出席率は不足だがレポート提出でカバー");
        }
        else
        {
            Console.WriteLine("【不合格】要復習");
        }
    }
}

動かして確かめてみる

  1. score・attendance・hasReport の値を変更
  2. それぞれの場合にどのメッセージが表示されるか確認
  3. 判定ロジックがイメージ通りに働いていることを確かめましょう

ポイント

  • step-by-step で改造することで「条件分岐の書き方 → 複合条件の組み立て」へ自然にスムーズに進めます。
  • if / else を“書いて動かす”→結果を見て調整するサイクルを繰り返すだけでも、十分に実践的な学習になります。

2‑3. リフレクションカード

その日の終わりに「条件式を学んで出来るようになったこと」を 1 行書く。

言語化=メタ認知 が自己評価を高める。


3. 学習者が自分でできる 4 つのセルフサポート策

3‑1. ゴールを“粒度”で区切る

ゴールの粒度取り組み方
最小ゴール「今日は if と比較演算子だけで OK。教科書の p.30–31 だけ読めば十分」
発展ゴール「else if と論理演算子を組み合わせ、3 段階評価を書けるようにする」

ポイント

  • 1 日でやる量を明確に決める
  • クリアしたら次へ進む。終わらなければ翌日に持ち越す

3‑2. “動いた!”体験を先に得る

  1. コードをコピー&ペーストで実行
  2. 動いたことを確認 → 1 行ずつ意味を調べて書き込む

なぜ効果的?

  • 成功体験でモチベーションが上がる
  • 動く実例があると「この範囲を覚えれば良い」と学習範囲が絞れる

3‑3. メタ認知を鍛える習慣を取り入れる

  • ラーニングログ
    • 学習時間・できたこと・疑問点を毎回メモ
    • 時間が経つほど自分の成長が“見える化”
  • ピアティーチング
    • 同じ課題を友人に説明し合う
    • 説明できない部分が“理解の穴”と分かる

3‑4. 小さなアプリで達成感を積み重ねる

  • 例:合格判定コンソールアプリ
    1. 点数を入力
    2. if だけで「合格/不合格」を表示
    3. 条件を変えて再実行

以下は、**「点数を入力して合格/不合格を表示するコンソールアプリ」**のシンプルなサンプル回答です。

初学者向けに、if 文だけを使って達成感を得られる内容です。


✅ サンプルコード:合格判定コンソールアプリ

using System;

class Program
{
    static void Main()
    {
        Console.Write("点数を入力してください(0~100):");
        string input = Console.ReadLine();
        int score = int.Parse(input);  // 入力を整数に変換

        if (score >= 60)
        {
            Console.WriteLine("合格です!");
        }
        if (score < 60)
        {
            Console.WriteLine("不合格です。");
        }
    }
}

🔍 解説

  • Console.ReadLine() でユーザーから文字列入力を受け取ります。
  • int.Parse() で文字列を整数に変換します。
  • if 文だけを使って、
    • 60点以上なら「合格」
    • 60点未満なら「不合格」をそれぞれ表示します。
  • else は使っていないので、「if だけでも条件分岐が書ける」ことの練習になります。

🔁 条件を変えて再実行する例

たとえば以下のように、合格ラインを変更してみると良いでしょう:

if (score >= 80)  // 合格基準を80点に変更
{
    Console.WriteLine("合格です!");
}
if (score < 80)
{
    Console.WriteLine("不合格です。");
}

🌱 初学者向けポイント

  • 条件式の書き方と >=, < の意味に慣れる。
  • 入力 → 判断 → 出力 の一連の流れを体験できる。
  • 条件値を変更して「ちゃんと動いた!」という達成感を得られる。

メリット

  • 条件式だけで実用的なツールが作れると実感できる
  • “教科書全部”ではなく“必要な部分”へ意識が向く

4. まとめ

  • 「教科書を丸暗記したい」= 不安と昔の学習習慣から来る自然な反応
  • 読める・書ける・説明できるまでを小さな目標に設定し、“動かす → 振り返る → 必要な範囲だけ読み返す” のサイクルで学ぶ
  • ラーニングログやピアティーチングでメタ認知を高め、小さなアプリで成功体験を積み重ねると、「全部覚える」から「必要を選んで学ぶ」 へ意識がシフトしやすい

まずは if が書けて動く

教科書は「辞書」だと心得て、必要なタイミングで引きましょう。

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Posted by hidepon