Unity 初学者のための「生成AIの正しい使い方」
AI丸投げで破綻しないための考え方と3つのフレーム
Unity や C# を学びながら個人制作を進めていると、ChatGPT などの生成AIを活用することが増えてきます。
AIは便利で、手軽にコード例や改善案を得られるため、学習効率が大きく向上します。一方で、使い方を誤るとプロジェクトが破綻したり、自分で修正できなくなったりするケースも少なくありません。本記事では、Unity 学習者が生成AIを活用する際に知っておくべきポイントを、
「なぜ破綻するのか」
「どう使えば安全なのか」
「どこに時間を使えば最も効果が高いのか」
という観点からまとめます。
1. 生成AIは“コード”は理解できるが、Unity全体は理解できない
AIは、提示された C#コード と 質問文 をもとに回答します。
しかし Unity の動作には、コード以外の情報が大量に存在します。
- シーン構造(Hierarchy)
- Prefab の構成
- Inspector の参照
- ScriptableObject の設定
- Animator / Animation のステート
- InputSystem のアクション設定
- DOTween のシーケンス
- コールバックの実行順序
- ランタイムオブジェクトの関係性
これらは AIには見えていません。
そのため、AI が返すコードは “正しいように見えても実際のプロジェクトとは噛み合わない” ことが発生します。
2. 破綻しやすい典型的なパターン
生成AIを使いながら制作している学生の中で、最もよく見られる共通パターンが次の3つです。
(1) とりあえず作って、動いたらすぐ次の仕様追加
完成イメージが固まる前に仕様を追加していくと、依存関係がどんどん複雑になり、後半で破綻します。
Unity は構造崩壊に弱いため、“思いつきの追加” が最も危険です。
(2) 時間が余ったから追加開発→破綻
「今日は余裕があるから、敵を増やそう」
「せっかくだから画面を分けよう」
「UIも追加してみよう」
こうした“急な仕様変更”は、設計が固まっていない段階では高確率でプロジェクトを壊します。
(3) 分からない部分を丸ごとAIに投げる
AIが提示するコードは局所的に正しくても、プロジェクト全体を考慮していないため、
- Update の多重呼び出し
- Input の競合
- NullReference
- シーン遷移で参照切れ
- ScriptableObject 破損
- Prefab 階層の破綻
といった問題が発生します。
3. 「追加する」より「理解する」方が圧倒的に価値が高い
Unity の学習では、
新機能を足すよりも、現在あるコードを理解し説明できる状態にする方が、完成率も、学習効果も、就職対策も、高い成果につながる。
という事実があります。
理由は次の通りです。
理由1:理解していれば、壊れても直せる
AI 生成コードを“貼っただけ”だと、何が起きているか説明できません。
理解しているコードなら、後から安全に拡張できます。
理由2:資料に落とし込むことで、設計が整理される
仕様や構造をスライドやメモに書き出すと、自分が理解していない箇所が自然に見えてきます。
理由3:面接で最も評価されるのは「説明」
就職面接では、
- なぜその実装にしたのか
- どう問題を解決したのか
- どこが工夫点なのか
- 何を学んだのか
が問われます。
説明できることが最大の武器です。
理由4:追加機能は理解してからの方が安全
構造を理解していない状態で仕様追加を行うと、既存コードとの整合性が取れなくなり破綻します。
先に理解する方が圧倒的に安全です。
4. 生成AIを使っても破綻しない「3つのフレーム」
計画性が苦手でも、以下のフレームを守ればプロジェクトが崩壊しにくくなります。
フレーム1:最低限の「完成ライン」を固定する
ゲーム制作であれば:
- タイトル
- メインゲーム
- リザルト
- 説明スライド
まずは、この“基礎セット”だけ確実に完成させます。
その外側に機能を足すのは後半でOK。
フレーム2:1日の作業は「3つだけ」選ぶ
やることを増やすほど破綻率が上がります。
例:
- プレイヤー操作
- UIレイアウト
- 当たり判定
- スコア表示
- バグ修正
この中から 3つだけ選ぶ のが最も効率的です。
フレーム3:新しい仕様追加は必ず相談する
AIは「仕様変更」に弱いため、追加要望をそのまま投げると破綻しやすくなります。
- 技術的に可能か
- 今の構造で壊れないか
- もっと安全な実装方法があるか
これらを相談してから追加するだけで、完成率は大きく上がります。
5. 生成AIの“正しい使い方”
AIは適切に使えば学習効率が2〜3倍になります。
推奨される使い方は次の通り。
推奨される使い方
- 自分で書いたコードの改善
- エラーの原因分析
- 設計の方向性の相談(複雑すぎない範囲)
- UI改善アイデア
- README・スライド文章
- 変数名やメソッド名の改善
- 小規模機能の追加
避けるべき使い方
- 大規模仕様の丸投げ生成
- Inspector を伴う機能の自動生成
- Update・Input・イベントを含む実装の全自動化
- プロジェクト全体の自動拡張
- AIが生成したコードの理解なしコピペ
6. AIに質問するときのテンプレ
AIに相談する際、次の情報をまとめると精度が向上します。
1. 作りたいこと
2. 今どう動いているか
3. 想定していた動き
4. 実際の挙動
5. 関連コード
これはそのまま技術者としての基本スキルにもなります。
7. まとめ
- AIはコードしか理解していない
- Unity は非コード部分が多いため破綻しやすい
- 思いつきの仕様追加は危険度が高い
- 追加よりも「理解」と「資料化」の方が価値が高い
- AIの活用は“補助”に留めることが重要
- 3つのフレームを守れば完成率が上がる
生成AIは非常に強力なツールですが、使い方を誤ると学習を妨げることがあります。
しかし正しく使えば、理解が深まり、作品が完成し、そして就職活動でも大きな武器になるでしょう。



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