リスコフの置換原則を破る継承の例

2025年5月28日

以下に、「リスコフの置換原則（LSP）を破ってしまう継承の例」として、猫（Cat）と人間（Human）に共通する名前を継承で表現してしまったケースを解説する資料をまとめました。

― 「名前が共通だから継承すべき」は本当か？

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1. リスコフの置換原則（LSP）とは？

定義：

派生クラス（サブクラス）は、基本クラス（スーパークラス）の置き換えとして使用できなければならない。

つまり、親クラスの代わりに子クラスを使っても、プログラムの動作が破綻しないことが原則です。

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2. よくある間違った継承の例

● 「猫」と「人」に共通して”名前”がある

→ 共通化したいから、Nameクラスを継承してみよう！

public class Name
{
    public string FullName { get; set; }
}

public class Cat : Name
{
    public void Meow() => Console.WriteLine("ニャー");
}

public class Human : Name
{
    public void Speak() => Console.WriteLine("こんにちは");
}

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3. 何が問題なのか？

● Cat is a Name？ Human is a Name？

この構造では、以下のような使い方が可能になります：

Name n = new Cat();
Console.WriteLine(n.FullName); // OK
n.Speak(); // コンパイルエラー（Catには Speak() がない）

● 継承関係が意味を成さない

• CatやHumanがNameという「名前情報」そのものになるのはおかしい
• ”〜は〜である”（is-a）関係が成立していない
• このような継承は、LSPを破っている

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4. 正しい設計：委譲（コンポジション）を使う

● 「猫」や「人」が「名前を持っている」（has-a）

public class Name
{
    public string FullName { get; set; }
}

public class Cat
{
    public Name Name { get; set; }
    public void Meow() => Console.WriteLine("ニャー");
}

public class Human
{
    public Name Name { get; set; }
    public void Speak() => Console.WriteLine("こんにちは");
}

これなら以下のような使用が可能：

Cat cat = new Cat { Name = new Name { FullName = "ミケ" } };
Console.WriteLine(cat.Name.FullName); // OK

Human human = new Human { Name = new Name { FullName = "田中一郎" } };
human.Speak(); // こんにちは

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5. まとめ

視点	間違った設計	正しい設計
関係性	Cat is a Name	Cat has a Name
LSPの観点	× 置換できない	○ 置換が不要
設計の柔軟性	× 型混乱・誤用の可能性	○ 意味的に正しい

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6. 教訓

• 「共通のプロパティがある＝継承すべき」とは限らない
• 継承すべきか迷ったら「is-a関係」が成り立つかを確認
• 共通化したいだけなら、「委譲（has-a）」が安全